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コルソス島奇譚 warcry

 オージルシークスが暴れまわる様子を、ミウリ、リナール、カドゴス、そして、ソウジャーン号の生き残った船員達――無論、船外で警戒は続けている――は水晶玉を通じて眺めていた。誰もが顔を苦々しく歪め、武の心得を持つものなら、今すぐにでも走り出しそうな焦燥を、必死に、その身の内に封じざるをえなかった。


「まずいな、どうするカトゴス」

 リナールも平静ではいられないのだろう。すでに空になったゴブレットを煽ろうとして、中身がないのに気付き、力のない笑みを浮かべて、隣りに座ってるカトゴスに問うた。 

「……祈るしかなかろう。俺は婆様達を信じるね」
「確かに偉大なる占星術師らしいからな。君たちの出資者は」

 幾分の皮肉を込めてリナールはカトゴスを一瞥した。

 ミウリは「暗黒六帝ダーク・シックス以外なら誰でもいいので助けてください!」と喚き散らしていた。


 そして、その願いは直ぐ様叶うことになった。

 ゼラチナスキューブに足を取られていた竜は動きをとめ、ゼラチナス・キューブを道連れにして忽然と消え失せたのである。


「面舵だ。面舵で島の北側から南へと抜けろ! 間違っても竜に攻撃するな!」
「高度だ。高度を維持しろ!」

 スピーキングスートンにむかって、怒鳴るイルマリンにラッカムが追加の命令を付け加えた。氷の吐息よりも、魔法が怖い。大きさから見て、相手はまず間違いなく齢数百歳を超える竜である。射程距離を伸ばす呪文距離延長エンラージの技法は収めているに違いない。下から火力のある魔法をバカスカ撃たれてはたまったものではなかった。

 西風の貴婦人号は高い練度を証明するかのように、ラッカムの命令を即座に実行した。艦は島の北西から侵入し、進路を南へと変え、高度を維持しながら、滑りこむように進んでいった。

 竜は何かに気をとられているのか、西風の貴婦人号に手出しをしてこなかった。

 ラッカムはこれ幸いとばかりに、次の命令を出すことにした。

「間違っても村の連中の頭上に落とすなよ! 投下準備!」

 スピーキング・ストーン越しに、ラッカムの命令が、イルマリン・タイケンの声を通して下知される。西風の貴婦人号の下部デッキに響き渡ったバリトンに突き動かされ、コボ達は持ち場の爆雷発射管に取り付いた。

 上甲鈑にいる見張り達からは、村人と思しき一団が、村から出撃して敵と戦闘しているとの報告はすでに入ってきていた。

 ならば、する事はひとつ。

 フェスティバルに現れるジェスター爺さんの様にとっておきの爆☆雷フェスティバル・コイン)/rp>を配ることだけ!


「投下5秒前……3、2、1、投下!」

 命令に従い、コボ達が一斉にレバーを引くと、ガコンという音を立てて、四角い発射口が外に向けて開かれ、あとはローラーコンベアに載せられた爆雷がガラガラと音を立てて投下されてゆく。

 彼らがその戦果を知る前に、西風の貴婦人号は加速と上昇を始めた。なにしろ自分たちの尻の下には、恐るべき竜がいるのだ。逃げるにしても、尻に帆をかけるだけでは到底足りず、ダイダロス級の艦の様に、エレメンタルリングを2重に掲げてもなお鈍足なのだ。

「機関室、最大戦速! 最後っ屁もかまして艦を軽くしろ!」

 ラッカムは豚っ鼻をヒクヒク動かしながらガナリ声をあげた。

 見張りの敵戦力発見の報に従って、最後っ屁とばかりに、爆雷を次々に投下して、確実に狂信者達を爆殺粉砕していった。結果、サッド達がB群、D群と呼んでいた敵の拠点は壊滅した。

 潰した拠点から立ち上る黒炎を背に、西風の貴婦人号はコルソスの空を滑ってゆく。

 その光景を見ながら、イルマリンとラッカムは深く息を吐いた。 歴戦のラッカムやイルマリンといえど、竜に喧嘩を売ったことはない。恐れと緊張が、今頃になって嘆ケ峰の万年雪のように少しずつ臓腑へと染みこんできたのだった。

「どうだ? 借金取りの婆さんは追いかけてきてるか?」
「いえ、観測員から報告。竜は消え失せました……ですが、いつ敵に回ってもおかしくありませんよ」
「だろうな。面舵だ。島の東側へ進路を取り、島を一旦、離脱、しかる後反転して再度接近通過しつつ、嘆ケ峰の麓に棺桶をばらまく。リシアに準備を急げと伝えろ」

 
 精霊機関がうなりをあげて、島を離脱している中、下部デッキでは「翌日までに芋を10トン箱詰めよろしく」と言われた農家の様な忙しさを呈している。所狭しと立てかけられた棺桶には、50体のウォーフォージドがすでに待機中であり、コボルド達がその棺桶の中にウーズを緩衝材として詰め込んでいる。

 コボルド達の子供の様なギャーギャーと甲高い音を聞きなれぬ者は、そのあまりの騒音に耳を塞ぎたくなるに違いなかった。しかも、精霊機関の機関部が放つ轟音、ときおり吹き出す蒸気も加わり、不協和音のアンサンブルというひどい環境で、ラッカム・トライアルをくぐり抜けた新人が1日で音を上げると噂の職場である。

 噂ではなく真実なのがまた救いようがない。

 その『笑顔が絶えない』職場で、リシアと呼ばれたハーフオークの少女はウーズの1匹、1匹に別れの挨拶をしていた。別れを惜しむ彼女の袖をコボルドが引っ張った。

「リシア、シャッチョさん、怒てる」

 人間の共通語がうまく発音できない為に、所長という言葉がシャッチョさんという、辿々しく、同時にいかがわしい言葉になっていた。

「わかってる。もうおわる」

 リシアは涙を浮かべながら、ウーズの1匹、1匹にくちづけをして、別れを告げた。

「さよなら、私のウーズちゃん」



「棺桶の準備出来ました」
「よし投下しろ」

 西風の貴婦人号は反転し、再度接近通過しつつあり、ラッカムは、棺桶投下の号令を放った。


 ウォーフォージドを押し込み、みっしりと隙間なくウーズを詰め込んだ棺桶が、ローラーコンベアでガラガラと音を立てながら、投下されていった。投下されたわずか1個小隊、50名の棺桶部隊は、波間を割いて海原を征くイルカの様に、枯れた熱帯樹をへし折り、積もった雪を撒き散らしながら数百ヤードにわたって雪原を滑ってやっと止まった。

 棺桶は、緩衝材たるウーズを詰め込んでいるものの、完全に衝撃を無効化するわけではない。それ故に、できるだけ中にいるウォーフォージドの事を考慮して、着地時の体制が仰向けになるように、ローラーコンベアの角度など、綿密に調整されていた。が、投下作業に関わるのは、よりにもよってコボルドである。

 およそ、世界中の知的な文明種族から嫌われているこの厄介者達は時折、信じられないことをやらかす。

 実際にこの時もやらかした。

 ウーズを規定数入れなかったために、隙間が生まれ衝撃を逃しきれず、脳震盪を起こし、生まれたての子鹿の様にプルプルと内股で、地面に刺した武器によりかかって、棺桶の中からようやっと立ち上がった個体もいたほどである。

 むしろ、死者が出なかったのが奇跡といってよかった。

 兎にも角にも、棺桶部隊は内側から天板をぶち破り、雪原の大地に立った。投下され降り立った場所は、嘆ケ峰の麓である。彼らに与えられた命令は2つ。

 1,コルソス村の戦力と合流し、できうる限り、協力せよ。
 2. 1週間以内に全ての敵勢力を排除せよ。任務達成が不可能ならば、生存を任務とし、迎えが来るまで現状を維持

 という過酷なものである。

 彼らは村人達と合流すべく、北上を始めた。が、途中の橋は落ちていた。

 ルイズがサッド達と氷蜘蛛達から逃亡する途中で落とした橋だった。

 彼らはウォーフォージド達は一旦、その場で停止して斥候を出すことにした。何しろ、いきなり戦場に投下された身である。情報もへったくれもなかった。

 15分もすれば、方方に散っていた斥候達は帰ってきて報告した。北に行った斥候は、古代カニスの水道施設を見つけた。その入口は腕に布を巻いたサファグンが数体入り口を見張っていたという。南に向かった斥候は、ゾンビや白い服を着た者達が嘆ケ峰内部へと通じる洞窟の入り口を守っていたという。

 東の海岸へ向かった者は帰ってこなかった。

 任務は敵勢力の排除とある。合流はその後でもいいはずだ。

 彼らは洞窟へ向かった。
 
 奇しくもそこは敵の本丸だった。

  

 空からありがたい恵みの樽は、ルクセンと彼の旗下にある傭兵隊を喜ばせるには十分だった。

 いくら盾持ちの兵隊がいるといえど、敵の陣地であるA群とC群の狙撃隊から矢の十字砲火を食らっては、足が鈍るのは仕方のない事だった。おまけに数が減ったとはいえ、かつての仲間といっていいゾンビ共も一山いくらの大安売りができる程にいる。

 傭兵の中にも魔法使いや弓を使えるものはいるのだが、隊として組織だった攻撃をできる程に数がいるわけではなく、鍛えあげられた故郷のデニス兵がいない事に、ルクセンは、ほぞを噛みながらひたすら耐えるしかなかった。

 そこへ、別に狙ってわけではなかっただろうが、A群C群の両陣地に爆雷が投下されたのだった。

 火縄のついた爆雷は、雪風吹きすさぶ荒野でも消えることなく、己の運命へむけて邁進し、その結節として爆発という現象を周囲にまき散らした。木の樽は炸裂し、その破片はピーラーでジャガイモの皮を剥ぐ様に、敵の体の一部を強引に削り取っていく。上からの爆圧は巨人たちが使う肉叩きのように頭蓋を押しつぶして穴を開け、今度は内圧から髄液と血液を間欠泉のように吹き出させた。

 それがたった1発の爆雷で起きた現象だった。

 ではそれが5発、6発と続いたならば?

 ――当然のことながら、それは正しく地獄と呼ぶべき有り様になった。

 万年雪から生じた雪崩が氷の地獄リシアというならば、西風の貴婦人号からの空爆は炎の地獄フェルニアというべきだろう。

 火と爆風が襲いかかり、死をまき散らされた結果、ルクセン達の目の前には、ついに動かなくなった死体の山と、おきあがろうとしている一部の死体だけがあった。

 散々といっていい程負けがこんでいた彼らは、空からの支援を得て、各々が思いの丈を込めて腹の底から快哉を叫んだ。

「野郎ども、この間抜け共にトドメさせ。その後は蛸ツボで宝堀りだ!」

 いいいいいやっはああああああと、現金で陽気な傭兵達は、今まで死にかけていたというのに、その言葉で一気に元気を取り戻した。

 難所を通り過ぎた彼らは、意気揚々と嘆ケ峰を目指し歩き始めた。

 そしてすぐに別の敵と遭遇した。

 西風の貴婦人号が潰し損ねたC群だった。

 ルクセンら傭兵隊にとって幸いだったのは、死人達と違って、生きている生身の人間であり、洗脳されている狂信者でありながら、戦闘経験のないズブの素人だった事だった。

 傭兵たちはケダモノのような雄叫びをあげ、まさに鎧袖一触で、c群にいた狂信者達、10数名を瞬く間に血祭りにあげた。


 ……そうして、辺りに動く物がルクセン傭兵隊意外いなくなり、ようやく彼らの血の滾りが落ち着いた頃、彼らに声をかける者達が現れた。

 油断することなくルクセン達はすぐさま臨戦態勢を整えたが、声をかけたのは、2人のハーフリングだった。

 行方不明になっていたドルーセン・ド・ジョラスコとハンサム・ウィルだった。







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