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コルソス島奇譚 峻険

 床には、名前と業績が彫られた石版が叩きつけられ、破片が散っていた。その破片をつなぎあわせ、かつ、共通語が読めるなら、ビョルン・ヘイトン、クラッグウルフ・ヘイトン、キレーネ・ヘイトン・ド・カニスの名が読めるだろう。そしてこの3人は――歴代のヘイトンが葬られた墓所の内部で、罰当たりな墓荒しを誅すべく―死の領域ドルラーから舞い戻ってきたのだった。しかも、心強いことに、なんと12人のご先祖様も引き連れて!
 
 スケルトン達のうち、最初の5体ががまず目を向けたのは、自分たちの目の前で、床に尻もちをついていたサファグンだった。彼らは汚れた力の源がそのサファグンから発せられているのを感じるや、勢い良く駆け寄り、殴る、蹴る、引っ掻く、引き裂く等、思いおもいの攻撃を始め、そのうちの一体が才人にしたように、馬乗りになって殴り、残りの7体がサファグンの尻尾を踏み潰し、体のいたる所に蹴りを食らわし、エラに手を突っ込んでは引き裂いた。

 サファグンは襲いかかる痛みに耐えかね、野太い断末魔をあげた。その場にいた罰当たりな当事者達は、被害者も加害者も、その悲鳴に――ルイズを除いて――正気に返った。

 ウルビアンとフラワーも、罰当たりの仲間と思われているらしく、残り8体のスケルトン達に囲まれようとしていた。

「なあドワーフ、お前神官だろう? 出番だぞ」
「おいエルフ、私はコル・コランの神官だよ? お代は別にもらうからね」

 ウルビアンに向かって言いたいことを言うだけ言うと、フラワーはいつものおばさん声とは違った、朗々とした美声で死者退散ターンアンデッドの祈りを捧げはじめると、彼女を攻撃しようとしたスケルトン達が動きを止め、美声に誘われるかのように体を大きく、ゆっくりと揺らし始め、その場にとどまった。

「もっと徳をつまないといけないようだな、ドワーフ」

 おやおや残念とでも言いたげな、皮肉めいた光がウルビアンの目元に宿った。より上位の位階の持ち主なら、死者を祈りだけで破壊することができる。まさに「塵は塵に灰は灰に」というわけだ。

「やかましいぞ、エルフ。ぼさっとしてないで働きな」

 ふん、と聞こえるほど大きく鼻を鳴らして、フラワーは星型鈍器を構え、スケルトン達を攻撃し始めた。



 ルイズは突然目の前で始まった壮絶な私刑を呆然と見ていた。

 この世に亜人がいるのは知っていたが、じゃあ目の前で動いている骸骨は何なのだろう? 

 自分が見ているのは悪い夢なのではないか?

 そんな面持ちをしたルイズを、正気を戻したのは、彼女がボンクラ平民と呼んだ才人の声だった。

「ルイズ、避けろ!」

 左耳から聞こえてきたトリステイン語にルイズは、はっとして、とっさに床に転がった。転がる事でルクセンの部隊員に「念入りに殺しとく」と宣言された、顔に傷のある男、ヤークナーの短剣から、からくも逃れることができた。

「ルイズになんて事するんだ!」

 才人は勢い良く駆け寄り、右手に持った棍棒をヤークナーへ向けて振り下ろした。

 ヤークナーはその攻撃を短剣で受けようとして、とっさに避ける事を選んだ。その選択はヤークナーにとっては正解だった。ヤークナーは才人の踏み込みを見て、彼がまったくの素人であると気づいたが、棍棒の勢いと、才人の視線の先――狙いが、自分の頭に見せかけて、実は手に持つ短剣であることを見抜いたのだった。

 攻撃を外した才人は深追いをせず、ルイズを背中に庇って、ヤークナーと対峙した。ヤークナーの一挙手一投足を見逃さないように、その動きに注意しながら、懐からルイズの杖を取り出し、左手で構えた。

 ヤークナーはこの状況に臍を噛む思いだった。

 このガキは素人ではあるが侮れない。右手に棍棒を持ち、左手に奇妙な小さい杖を構えている。二刀流なのか、はたまたウィザードなのか、接近して戦うべきか、一旦距離を取るべきか、どうにも判断がつかなかった。

 あの女を人質にとればもう少し楽だったのだが。

 ちらりとジャコビーを見れば、頭をかかえてうずくまっていた。あの役立たずめ!

 ヤークナーが視線を才人に戻すと、奇妙な事に気づいた。

 ガキが左手に構えていた杖がない!

 どうにも嫌な予感に突き動かされ、ヤークナーは逃げることができるか、目だけを動かして入り口を確認した。だが入り口は、ドワーフとエルフがスケルトンを相手取って、突破できそうにない。

「ルイズ、やっちまえ!」

 ガキ――才人の声にヤークナーは、はっとした。目の前には、男のガキではなく、女のガキが無防備にも背中を見せていた。しかも――縛られているその手には、小さな杖が握られて、こちらに向けられて――。

『錬金!』

 女が何かを叫んだ途端、ヤークナーの目の前で光が爆発した。


 
「ルイズ、やっちまえ!」

 才人のその声に、ルイズは、勇気と怒りを滾らせた。今まで自分が受けてきた屈辱を晴らすのは、今をおいて他にはない。

 あの男だけは絶対に殺す。始祖に誓ったように、楽に殺してやるものか。

 背中を向けているので、男の姿は見えなかったが、見えずとも構わなかった。汚らわしい男の姿なぞ視界にいれたくもない。

 ルイズはただ一言を口にするだけでよかった。ただそれだけで復讐が完遂できる!

『錬金!』

 ヤークナーの目の前で発生した爆発で、ヤークナーは10メイルは吹き飛び、サファグンを叩きのめしていたスケルトンの群れに突っ込んだ。新しい乱入者にスケルトン達は動じることなく、さっそく引き裂きにかかった。

 ヤークナーはスケルトン達の手によって、生きながら引き裂かれていった。

 ――こんな所で俺は死ぬのか、あんなガキ共の手によって?

 ヤークナーはやがて何も見えず、聞こえず、ただ静かに闇の世界へ沈んでいった。



 ヤークナーを引き裂いている者たち以外のスケルトン達は、新しい生贄を投げ入れたルイズと才人を敵と認識しているらしく、今度はこの二人を誅すべく近寄ってきていた。

「ヤバイ! 魔法を連射してくれ!」
『レンシャ?』
「いいから撃ちまくれ!」
『わかったわよ! 錬金! 錬金! 錬金!』

 当然のことながら、ルイズは未だに後ろ手に縛られていた。スケルトンに背中を見せたまま、魔法の杖をつきだし、ルイズは魔法を連射した。その様子は、さながらルイズを生きている肉の防盾にしたてた機関砲だった。砲手は才人である。

 砲手たる才人は「全員伏せろ!」と叫んで、ルイズの影にこそこそと隠れながら、こちらへむかって、殺到するスケルトンを相手に、右へ、左へとルイズ砲をふりまわし、ハルケギニアではありえない現象を目にしたルイズは、臆することなく、こちらへ走り寄ってくるスケルトンに――彼女には見えていなかったが――爆発魔法をお見舞いしつづけた。

 突然始まった爆発の連続に、さしものウルビアンとフラワーも仰天し、あわてて床に伏せ、それぞれに頭を守った。才人がルイズをふりまわしたせいで、爆発は360度にわたって展開され、石棺はおろか、壁まで吹きとばし、破片がフラワーとウルビアンの頭を何度も小突いた。そのうち、爆発はついに外壁をつきやぶり、外の寒風が吹き込んできた。どうやら村の結界の範囲外まで突き破ったようだった。

 才人の的確――かどうかは疑問だが――なルイズ捌きにより、スケルトンは次々と爆発、四散していった。頭蓋骨は木っ端微塵になり、大腿骨はおろか、小指の末節骨にいたるまで砕け散り、誰の、どこの骨なのか、判別は専門家でも不可能なのではないかという有様になった。

 やがて、動く者が何もいなくなったのを見計らって、才人は爆発音のせいでじんじんと苛む両耳の痛みを堪えながら、ルイズに言った。

「ルイズ、もう大丈夫だ」

 しかしルイズにはきこえていなかったらしく、いまだに「錬金、錬金!」と呪文を唱えている。

 才人はルイズの肩を叩いた。

「ルイズ、もう大丈夫だ」

 ルイズは才人に肩を叩かれてやっと気づいたのか、呪文の詠唱を止めた。

『……敵は?』
「……動いている奴はいないよ」

 才人のその答えにルイズは安堵し、才人によりかかった。

 力を連続で行使したせいか、ズキリと頭が痛んだ。

「おーい、フラワーちゃん、ナイフを貸してくれ。ルイズの縄をきってあげないと」

 才人はフラワー達の方を見た。フラワーは、まるで盾に頭を突っ込むようにして伏せていて、ウルビアンは武器も放り捨てて両手で頭を抱えて突っ伏していた。二人してぴくりとも動かない。

「あれ? フラワーちゃん?」

 才人は顔を青くした。まさかと思うが、殺ッチマッタ?

「……サイトォォォ~」

 盾の奥からくぐもった怨嗟の声がサイトとルイズの耳に届いた。

「あ、生きてた。あっぶねー。やっちまったかと思ったよ。フラワーちゃん大丈夫?」

 サイトはツカツカ歩み寄って、フラワーに手を差し出した。起こすのを手付うつもりだった。ところがフラワーはサイトの手を握るや、ぎゅっーと勢い良く握りつぶした。

「痛ぇぇぇ!」
「こんな間近で、大爆発起こすような大魔法をぶっ放させんじゃないよ! アタシらを殺す気か!」
「……サイト君、さすがに一言欲しかったな」

 ウルビアンは音もなく立ち上がり、自分の体についた汚れをパンパンと叩き払うと、無表情に苦情を述べた。

「いや、だから伏せろって、ぬぐをぁぁぁ!」

 その返答を聞いたフラワーはサイトの手を握りつぶしただけでなく、盾から左手を引っこ抜き、才人の顔をガッシと掴んで力をいれた。

「まだ言うか。こういうときはなんて言うのかカーちゃんから教わったろ?」
「ごめん、マジごめん!」

 それでいいんだよ、とフラワーは才人の顔から手を離し、立ち上がった。

「ルイズ、大丈……」

 フラワーは、ルイズの三条を見て、途中で口をつぐみ、ルイズに近寄ると、黙ってナイフを抜き、彼女を縛っていた縄を切り落とした。

「ルイズ、髪はだいぶ短くなっちまったけど、アンタは別嬪さんだよ、安心おし」

 そういって、ルイズの短くなってしまった髪を撫で、涙の後が残るルイズの顔をぬぐってやった。

「……ああ、あんたは共通語わかんないんだったね。おーい、通訳、アタシの言ったとおりに翻訳しな」

 才人はフラワーに言われたとおりに通訳した。

 ルイズはフラワーの慰めの言葉を聞いて、そもそもはフラワー自身の台詞にもかかわらず、なんだか才人に言われているようで、心臓が高鳴った。

(うう、わ、私のために見の危険を顧みず、き、きてくれたのよね?)

 才人の悪戯のせいで、大恥をかかされて、口も利きたくなかった男。だけど、彼は危険を顧みず自分を助けるために戦ってくれた。そんな事、果たしてどれだけの人ができるだろう? トリステイン魔法学院の自分のクラスの男の子達は、やれ貴族の義務だの名誉だの、普段から大きな口を叩いているけど、この平民みたいに本当の勇気を持っている男の子っていないのではないだろうか……。

 そう思うと、ルイズにはなんだか、才人がまさに自分の為に、始祖が選んだ、大切なパートナーに思えて来たのだった。

『あ、ありがとう……』

 ルイズは顔を真っ赤にしてボソっと小さな声で、自分のために来てくれた才人に感謝した。

「当たり前の事しただけさ」

 そう言ってニカっと笑う才人にあてられ、ルイズは才人の顔をマトモにみれなくなった。

 そんなルイズの様子を見たフラワーはティンと来たらしく、すっと彼女から離れた。ちょうどいい仲直りの機会だと思ったのだろう。

 一方、そんなフラワーの気遣いにも気づかず、ルイズは一人、血圧をあげていた。

(ど、ドドド、どうしよう。平民の分際でけっこうカッコイイじゃないのコイツ!)

 平たい顔族という亜人なのではないかと思った程の凹凸のない顔なのに、なんだかいいオトコのように思えてくる。顔は敵との戦闘に傷ついたのかパンパンに腫らせて、フツーの不細工が、ものすごいブサイクにランクアップしているが、私を守る為についた傷なのだと思えば……その傷すらも愛しく感じる。

 案外、惚れっぽいルイズであった。

 (助けてくれたお礼ってどうすればいいの!? まさか、キ、キ、キスとか? 多情なツェルプストーじゃあるまいし!?)

 才人にどうすればいいのかわからず、頭の中をグルグルと無駄に回転させていたルイズだったが、いつぞやの園遊会で見た、アンリエッタ姫殿下のように、手を許せばいいじゃないのと思いついた。

(そうよ。忠誠には報いる所をあげなきゃいけないのよ。姫殿下みたいにすればいいじゃない!)

 ルイズは決心すると、すっと、右手の甲を才人に差し出した。

『サイト・ヒラガ、よく私を助けてくれましたね。本当に感謝しています。ありがとう、私の騎士様。そなたの忠誠には報いましょう。……手を許しますわ』

 アンリエッタの優美な立ち振舞を脳裏に描きながら、ルイズは彼女の真似をしてみせた。

 そんなルイズの笑顔にあてられて、ポケーっと才人はアホ面を晒していた。

「手を許す?」

 ルイズの言っている意味がわからず、才人はまごまごしだした。

(ボンクラ平民と罵った彼女だけど、これはオレのイタズラを許してくれたという事なのか? ルイズの言っている「手」を許すってなんだ? 手をだしていいってこと?)

 助けを求めてフラワー達の方を見るが、ウルビアンはサファグンの死体を検分してこっちをみておらず、フラワーは才人を見てニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ、口をすぼめてチュっと音を立てた。

(そっか、キスしてokってことか)

 ルイズはバッチコイと誘っているのだと才人は理解した。

 ルイズ・フランソワーズは紛うことなき美少女である。その特徴的なピンク・ブロンドの髪こそ、ざんばらに切られてしまっているが、深層のお嬢様といった以前の印象は薄れ、意思の強そうな瞳、才人のためだけに浮かべている笑顔からは、コケティッシュな、彼女の新しい魅力を醸し出していた。

(やっぱり、この子かわいいよな……)

 ぐびっとつばを飲み込んで、才人は宣言した。

「えっと、許可ももらったんで、それじゃあ頂きます」

 ご丁寧にも柏手を打ってから、才人はルイズの腰に手を回して、思いっきり間近に抱き寄せた。

 ルイズが『え?』と思う間もない早業で、才人はルイズの唇を奪った。

「んム~~!」

 ルイズが、今自分に起きている状況を正確に認識して、抗議の意味で才人の胸を強く叩くと、才人は「何この子!? スゲー情熱的!」と、素晴らしい勘違いを起こして、より強く、ルイズを抱きしめて、今まで以上にルイズを貪った。

『……アンタ、いい加減にしなさいよ!』

 才人の脛を思いっきり蹴り飛ばして、どうにか拘束から免れると、ルイズは、怒りと羞恥に顔を真っ赤にして怒鳴った。

「蹴らなくてもいいじゃんか!」
『蹴るにきまってんでしょ! 手を許すっていうのは、手に接吻を許すって意味よ。だ、誰が唇にしていいっていったのよ!』
「え!? だってフラワーちゃんがGOサインだしたぜ!?」
「……貴族のお嬢さんが手の甲を差し出したら、普通はそこに接吻するだろ……常識的に考えて」

 フラワーもさすがに才人の常識の無さにあきれ果てていた。

『ア、アンタ、こ、今度不埒な真似したら、こ、殺すわ。始祖ブリミルに誓って殺すから』

 ルイズは真っ赤になった顔を伏せ、小さな声でボソボソと言うと「え? 何、きこえない」と才人が一歩近づくと『近づくんじゃないわよ! このエロ騎士!』と杖をつきつけた。

「なあ、そろそろいいか?」

 ついさっきまで殺し合いをしていたのに、いつの間にやら茶番劇を演じている面々に、ウルビアンはあきれ果てていた。

「そいつの処遇はどうするんだ?」

 ウルビアンは、くいっと顎を動かして、未だ床に蹲って震えているジャコビーを指し示した。

「……おまえ? まさか、ジャコビー?」

 才人は、床に蹲る男が、洞窟で皆を見捨てて逃げたジャコビー・ドレクセルハンドだという事に気づいた。

 ジャコビーの姿を見て、才人の怒りは熾火のように燃え上がった。

「……テメェ! 一昨日はみんなを見捨てて逃げたくせに、今度はルイズを殺そうとしたのか!?」

 才人はローブの襟を掴んで、無理やりジャコビーを起き上がらせた。

「ち、ちが!」
「何が違うんだ!? ふざけんな!」

 才人は完全に頭に血が上ってしまい、拳を固め、ジャコビーを思い切りぶん殴ろうとしたのだが、それを止めたのは、意外にもルイズだった。

『待って。言葉はわからなかったけど、一応その人はもうひとりを止めようとしていたみたいよ』

 ルイズの言葉に才人の拳はぴたりと止まった。

『だけど、魚男が私を殺そうとしたときは、暴れる私を抑えつけたわ。こっちの法律とかわからないけど、衛士にその男を引渡すべきよ』
「……ルイズはそれでいいのか?」

 才人がルイズに確認を取ると、ルイズは頷いた。

「ジャコビー、あんたをシグモンドの親父さんに突き出す。あんたの裁定は親父さんにしてもらうよ」

 才人がそう言うと、ジャコビーは「ちがう、私は裏切り者なんかじゃない!」と暴れだした。

「いい加減にしろ! お前があの男と一緒にルイズを殺そうとしたのは、ルイズ自身が証言してるだろ!」
「違う! あいつがムリヤリさせたんだ! しなければ殺すと脅されたんだ!」

 私じゃない、私じゃないんだと、ジャコビーは才人の手から逃れるべく暴れに暴れた。

 才人が、こいつをぶん殴っておとなしくさせようと決意した時、ついにジャコビーは才人の手を逃れた。

「あ!? こいつ!」

 いやだ、いやだ、と、うわ言の様に喚きながら、ジャコビーは出口を探して、めまぐるしく顔を動かした。

「いい加減、観念しなよ」

 才人一人では、抑え切れないと判断したのか、フラワーとウルビアンは出口を固めた。

「私じゃない、私じゃないんだ!」

 ジャコビーは、まるで自分に言い聞かせるように叫んだ。そして、彼は出口が二人に固められて、突破は無理と悟ると、ルイズが魔法で吹き飛ばした、唯一の出口を見つけ、そこへ走りだした。

「よせ、ジャコビー!」

 才人が彼を止めようと、必死に手を伸ばしたが、間に合わず、彼はその手をすり抜け、身を踊らせた。

 その行為にルイズは、「ひっ」と息を飲み、青ざめた。フラワー達もあっけにとられているが、今から行動を起こしても到底間に合わない。

 ジャコビーは、虚空へ飛び出しても、まだ、自分の無実を叫び、訴えていたが、その声は途中から断末魔の叫びとなり、それも、やがては海鳴りにかき消された。

 ジャコビー・ドレクセルハンドは、再び海へと消えた。







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No title

にじふぁんから追いかけてきました。
続きを楽しみにしています。

Re: No title

> にじふぁんから追いかけてきました。
> 続きを楽しみにしています。

 ありがとうございます。のんびりがんばっていきます。
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